このたび、夫婦になりました。ただし、お仕事として!
宝石のように綺麗な瞳が、咲穂をつかまえる。囚われて、まばたきひとつできずに彼を見つめ返す。不覚にも心臓がドクドクとうるさく鳴っていた。
近すぎる距離に、咲穂は思わずギュッと目をつむる。
「……キスするわけじゃないから、瞳を閉じる必要はないが」
からかうような笑い声が聞こえたのと同時に、大きな手が咲穂の顎にかかる。
(わ、わぁ!)
「こういう色はラフに、少しオーバーリップに塗るといい」
メイクのテクニック的なものを櫂が教えてくれているけれど、自身の心音にかき消されてちっとも聞こえない。
「はい、OK。鏡を見てごらん」
櫂の手が顔から離れる。それでようやく咲穂は大きく息をついた。
「えっ?」
両手で持った手鏡に映る自分の顔に驚き、小さく声をあげる。
「わぁ、いつもと全然違う」
卑下するわけではないけれど、自分は地味顔。よくも悪くも目立たないタイプだと分析していたが、その思い込みをひっくり返された。
「すごい。オシャレで、今っぽい。リップひとつでこんなに変わるんですね!」
透けるように色づく赤いリップは、咲穂の顔色をいつもよりうんと明るく見せる。カジュアルなのにどこか色っぽく、まさに変身だった。
興奮気味の咲穂を見て、櫂は満足そうにうなずく。
「だろう?」
「はい! 美津谷CEOのおっしゃる『売上より大切なもの』を実感できた気がします」
宝物を見つけたような、ドキドキワクワクする気持ち。リベタスが顧客に提供したい価値はきっとこれなのだろう。
「君は癖の少ない顔立ちで、無色透明だ。どんなメイクも映えるし、いくらでも変身できる。俺にとっては……理想的な女性だな」
近すぎる距離に、咲穂は思わずギュッと目をつむる。
「……キスするわけじゃないから、瞳を閉じる必要はないが」
からかうような笑い声が聞こえたのと同時に、大きな手が咲穂の顎にかかる。
(わ、わぁ!)
「こういう色はラフに、少しオーバーリップに塗るといい」
メイクのテクニック的なものを櫂が教えてくれているけれど、自身の心音にかき消されてちっとも聞こえない。
「はい、OK。鏡を見てごらん」
櫂の手が顔から離れる。それでようやく咲穂は大きく息をついた。
「えっ?」
両手で持った手鏡に映る自分の顔に驚き、小さく声をあげる。
「わぁ、いつもと全然違う」
卑下するわけではないけれど、自分は地味顔。よくも悪くも目立たないタイプだと分析していたが、その思い込みをひっくり返された。
「すごい。オシャレで、今っぽい。リップひとつでこんなに変わるんですね!」
透けるように色づく赤いリップは、咲穂の顔色をいつもよりうんと明るく見せる。カジュアルなのにどこか色っぽく、まさに変身だった。
興奮気味の咲穂を見て、櫂は満足そうにうなずく。
「だろう?」
「はい! 美津谷CEOのおっしゃる『売上より大切なもの』を実感できた気がします」
宝物を見つけたような、ドキドキワクワクする気持ち。リベタスが顧客に提供したい価値はきっとこれなのだろう。
「君は癖の少ない顔立ちで、無色透明だ。どんなメイクも映えるし、いくらでも変身できる。俺にとっては……理想的な女性だな」