冷徹無慈悲なCEOは新妻にご執心~この度、夫婦になりました。ただし、お仕事として!~
「私のメリットはよくわかります。でも、CEOは……本当に好感度のためだけに結婚する気なんですか?」

 なにか裏があるのではないか? 疑惑交じりの咲穂の視線を、彼は堂々と受け止めた。

「好感度ではなく、リベタスの成功のためだ。……俺にも、ちょっと厄介な問題があってね。俺に弟がいるのは知っているか?」
「はい、白木チーフから聞いたことがあります。(じゅん)さんとおっしゃるんでしたよね?」

 たしかMTYジャパンの営業部に所属していたはずだ。

『お兄さんとはあまり似ていないけどね~』

 理沙子がそんなふうに話していたことを思い出す。

「その弟さんと、今回の件にどんな関係が?」

 彼の話によると、櫂と潤は異母兄弟なのだそう。

「よくあるお家騒動ってやつだ。俺は前妻の子で、後妻である継母(はは)は自分の産んだ潤を父の後継者に据えたい。だから俺が邪魔なんだ。先日の週刊誌の記者も継母の差し金だろうと思う」
「え、CEOのゴシップを狙って……という意味ですか?」

 イエスと答える代わりに、彼は大きく息を吐く。

「大きなものから、このレベルのくだらない嫌がらせまで。彼女は俺の足を引っ張ることに夢中でね……」

 そう言われてみると、【火遊び】だの【部下の女性をもてあそぶ】だの、この記事は櫂をおとしめる意図で書かれているように思える。

 櫂は「ここだけの話」と社内事情も明かしてくれた。
 米国のMTYニューヨークからやってきた彼にとって、この日本法人は決して味方ばかりの場所じゃないのだそうだ。
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