このたび、夫婦になりました。ただし、お仕事として!
「俺は弟と表立って対立しているつもりはないが、どうしても派閥のようなものはできてしまっていてね。継母の率いる弟派の連中は、リベタスプロジェクトが失敗に終われば、嬉々として俺を引きずりおろすだろう」

 櫂は強い目で咲穂を見つめた。

「君と同じく、俺もこのプロジェクトに人生を懸けているんだ。そして、リベタスの成功には君が不可欠だと感じている」

 櫂は大きな手を咲穂に伸ばす。

「だから、崖っぷち同士で手を組まないか?」

 咲穂はゴクリと唾をのむ。

(夢を諦めて地元で結婚するか、ここで彼の手を取って夢に突き進むか……それなら!)

 勢い任せすぎるかもしれない。けれど、不思議と迷わなかった。
 彼の手をグッと強く握り返す。

「あなたと組みます。私も夢を叶えたい、絶対にリベタスを成功させたいので!」
< 32 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop