このたび、夫婦になりました。ただし、お仕事として!
「え~、そんなことないわよ。公開されたら、きっと出水さんも話題になるわ! そう考えると、あまり顔を出さないというCEOの戦略は大正解かもね」

『妻の顔は映しすぎないようにしてくれ。チラッと映るくらいのほうが……何度も確認したくなって、広告効果があがるからな』

 彼はそんなもっともらしい理由をつけて、咲穂の露出を極力抑えてくれた。

「メイクもいいわね。さっすが七森さん!」

 櫂と咲穂のメイクは予定どおり悠哉が担当した。理沙子の称賛は決しておおげさではなく、櫂が彼をご指名する理由がよくわかった。

(白をベースにしたこの映像に、リベタスのゴールドロゴがのる。うん、間違いなく素敵になりそう!)

 咲穂は早くも完成CMを想像してニヤニヤしてしまう。これから、この素材をもとにしてTV用の十五秒と、ネット用のもう少し長いバージョンのCMを制作していく。

 咲穂の仕事はここからが本番なのだ。合わせて、発売後に流すことになるメインCMの企画もどんどん進んでいるところ。

(ものすごく忙しくなるけど、楽しみだな!)

「ここまで素敵だと、いっそメインCMもふたりに任せればよかったと思っちゃうわね」

 画面をうっとりと見つめながら、理沙子がつぶやく。

「撮影時に、七森さんも同じことおっしゃっていたんですけど……美津谷CEOがそれはないと断言していましたよ」

 櫂の台詞をそっくりそのまま、彼女に伝える。

『こういう冒険に踏みきったのは、あくまでもインパクトが重要な発売前プロモーションだからだ。発売後は、本職のタレントを使った王道のCMでいく』
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