このたび、夫婦になりました。ただし、お仕事として!
「そろそろ行こうか。夜景は店内でも楽しめるから」
今、いる場所はレストランの入口へと向かう細い通路だ。この通路から眺める夜景だけでも、十分すぎる価値があった。
「は、はい。それにしても……すごく静かですね。土曜日なのに、ほかのお客さまはいらっしゃらないんでしょうか」
咲穂の問いかけに彼はなんでもないような顔で答える。
「貸しきりにしたから。今夜はこのフロアごと、俺たちのものだ」
「か、貸しきり……」
セレブのデートのあまりの豪華さに、目がくらむような気がした。
もう二度と来ることはなさそうな高級レストラン。最初はマナーが気になってガチガチに緊張していたものの、櫂がさりげなくリードしてくれるので、オードブルが提供される頃にはリラックスして食事を楽しめるようになった。
「お、おいしい~」
ふわっと柔らかい白身魚に濃厚なクリームソースがベストマッチ、ひと口食べただけで咲穂を幸せにしてくれる。
「この付け合わせも初めて食べる食感です。なんていうお野菜なんだろう?」
モグモグしながら首をひねる咲穂に、櫂が答えをくれる。
「多分、アイスプラントかな」
なるほど~と感心したあとで、咲穂は急に不安になる。
(もしかして私……櫂さんに恥ずかしい思いをさせているかな? 『おいしい』って語彙力なさすぎだし、このアイスプラント?も初めて聞いたし)
ほかに客はいないけれど、給仕スタッフの目はある。櫂だって、釣り合いが取れていないことは初めから承知のうえだろうけれど……咲穂がここまでひどいとは思っていなかったかもしれない。
「どうした?」
「いいえ、なんでも」
今、いる場所はレストランの入口へと向かう細い通路だ。この通路から眺める夜景だけでも、十分すぎる価値があった。
「は、はい。それにしても……すごく静かですね。土曜日なのに、ほかのお客さまはいらっしゃらないんでしょうか」
咲穂の問いかけに彼はなんでもないような顔で答える。
「貸しきりにしたから。今夜はこのフロアごと、俺たちのものだ」
「か、貸しきり……」
セレブのデートのあまりの豪華さに、目がくらむような気がした。
もう二度と来ることはなさそうな高級レストラン。最初はマナーが気になってガチガチに緊張していたものの、櫂がさりげなくリードしてくれるので、オードブルが提供される頃にはリラックスして食事を楽しめるようになった。
「お、おいしい~」
ふわっと柔らかい白身魚に濃厚なクリームソースがベストマッチ、ひと口食べただけで咲穂を幸せにしてくれる。
「この付け合わせも初めて食べる食感です。なんていうお野菜なんだろう?」
モグモグしながら首をひねる咲穂に、櫂が答えをくれる。
「多分、アイスプラントかな」
なるほど~と感心したあとで、咲穂は急に不安になる。
(もしかして私……櫂さんに恥ずかしい思いをさせているかな? 『おいしい』って語彙力なさすぎだし、このアイスプラント?も初めて聞いたし)
ほかに客はいないけれど、給仕スタッフの目はある。櫂だって、釣り合いが取れていないことは初めから承知のうえだろうけれど……咲穂がここまでひどいとは思っていなかったかもしれない。
「どうした?」
「いいえ、なんでも」