第一幕、御三家の桜姫


「認めたかねーけど、やっぱ顔面偏差値で敵う気がしねーな」

「元気出して遼くん! 遼くんもカッコいいよ!」

「お前と蝶乃に決まってんだろ馬鹿が! 何で俺が自虐しなきゃなんねーんだよ!」

「酷い! ていうか自分の顔いいと思ってるの? やーいナルシスト!」

「テメェ……」

「ま、喧嘩するほど仲が良いってね」


 スッと、私達の隣を通り越して受付を済ませるのは鹿島くん。相変わらず無難で目立たない優等生みたいだ。鹿島くんが右手、蝶乃さんが左手にブレスレットをはめて、二人は仲良く手を繋ぐ。思いの外お似合いの二人に、ほほう、と思わず感嘆した。桐椰くんは溜息をつく。


「マジで顔だけはいい女だな……」

「フラれた過去を思い出して落ち込んだりしないで遼くん! 今の遼くんには私がついてるよ!」

「あぁそうだな励ましてくれてどうも」

「痛い痛い痛い」


 私の頬が千切れるんじゃないかってくらい強く引っ張られる。月影くんの助言になんか従わなくていいのに!

 それから五分くらい、何組かのカップルが集まって受付をしていた。飯田さんは企画役員の手伝いなのか、事務の隣で足をくんで座っていた。


「──遅れてごめん」


 そろそろ開始かな、と思う頃に松隆くんが現れる。鹿島くんの鋭い視線が黒縁眼鏡を通して松隆くんを見た。


「……へぇ。俺達の見張りは松隆に決まったってわけか」

「あぁ。三日間よろしくな、鹿島」

「こちらこそ」


 生徒会長と御三家のリーダーが睨み合う場面は中々壮観だ。鹿島くんは普通にカッコイイ顔だと思うし、松隆くんは腹黒ささえなければ美しいイケメンだし。


「こう見るとお前だけマジで顔面偏差値低いな」

「彼女に向かってそんなこと言ってるから歴代彼女にフラれ続けるんだよ遼くん」

「だからテメェなっ」

「はーい、参加者のみなさんいいですか? 事前申し込みとキャンセル分含めて全員の受付が終了しましたので説明に入ります」


 教室内に聞こえるように事務の子が声を張り上げた。教室内をぐるりと見回せば、参加してるのは私達以外に八組。徽章にも目を凝らしてみれば一年生はいなくて、二年生か三年生ばっかりだった。

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