第一幕、御三家の桜姫
「説明はわたくし、三日目のベストカップルコンテストの司会進行も務めます、多々羅寿絵です。三日間よろしくお願いしますー!」
企画役員と書かれた腕章をつけている多々羅さんが軽く会釈した。ショートボブの茶色い髪が少し揺れる。
「今からみなさんにお配りするのは一日目のチェックポイントです。三か所あるので好きな順番で好きな時間に回ってもらって結構です。終了は午後三時、それまでにこの教室に集合してください。その時にブレスレットを外して一日目終了です」
「マジでずっと手つなぐのか……」
「私も同じこと思ったよ。以心伝心だね幸先良いね!」
「お前ら二人あんまりふざけてると道中で殴るからね」
優しく冷ややかな松隆くんの声が呪いのようにかけられて二人して背筋を伸ばした。さすがリーダー、怖い。
「途中でブレスレットが壊れたり外れてしまったりした場合はその時点で失格、またチェックポイントを回り切れなかった場合はその分の得点がゼロになります。ご注意ください。それから、チェックポイントはベストカップルコンテスト参加者以外のカップルも参加可能とされています。チェックポイントの数が少ないからといって時間に余裕を持ちすぎないでくださいね。では、質問はありますか?」
無言で答える参加者を見回し、多々羅さんの目がキラッと光った。どうやら企画役員はこのイベントを純粋に楽しんでいるらしい。
「では、花咲高校第九十九回文化祭、Best Couple Contest──略してBCC、開始!」
蝶乃さんと鹿島くんが「じゃあお先に」と出て行くのに合わせて、松隆くんも「頑張れよ」と残して出て行った。私と桐椰くんは顔を見合わせる。
「……どこから回ろうか」
「時間切れになったら面倒だから早く回っときたいな。……つか、お前結局料理できるようになったのか?」
「私は遼くんが頑張ってくれるって信じてるから!」
「お前マジでBCC終わったら一発殴るからな」
初めて知った単語をすぐに遣いたがるなんて可愛いところあるねと言ったら今すぐ殴られた。嘘つき。
「じゃあ相手のことどのくらい知ってますかってとこにしようよ。忘れる前に解答しときたいし」
「それもそうだな」
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