第一幕、御三家の桜姫
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「ねー、鹿島くんと松隆くんは仲悪いの?」
「いや……別に接点は何もないはず。会社同士で何かあったら俺は知らねーけどな」
「ふーん。そういえば松隆くんのお見合い話とかって着々と進んでるの?」
「じゃねーの。アイツも見合いは嫌がってあんまり話たがらねーし……」
「今時お見合いって存在するんだね」
「アイツは両親が見合い結婚らしいからな。そのせいだろ」
「……親がお見合い結婚か恋愛結婚かなんて把握してるんだ」
「あぁ、どっかのタイミングで聞くもんじゃねーの……」
確かに、どこかしらのタイミングで、両親の馴れ初めは知るものなのかもしれない。そして桐椰くんの語尾が少し小さくなったのは、いなくなったお父さんのことを思い出してるからかもしれない。
「──じゃ、遼くん。送ってくれてありがとう。私の家、ここだから」
「あ? あぁ」
門の前を通り過ぎようとしていた桐椰くんは立ち止まる。家の中の明かりはついているものの、玄関の明かりは消えている。どうやらお父さんはもう帰宅したらしい。
その違和感に、桐椰くんは気付いたのだろうか。まじまじと、家を見ている。だから、門の前に立って、追い払うように手を振る。
「早く帰りなよ、遼くん。お母さん心配するよ?」
「……帰る、けど……お前……」
──その時、私の背後で扉の開く音がした。