御三家の桜姫
生徒会を潰す……? その言葉に思わず眉を顰めた。
「……何言ってんの? 生徒会役員って、お金持ち集団なんでしょ? そんなの、潰せるわけないじゃん」
先生だって保護者だって、なんなら一般生徒だって、みんな生徒会の味方だ。真正面から挑んだって意味はないし、生徒会の悪行といっても、所詮は一般生徒に対して威張っているだけ。公にしたってなんの意味もない。下手したら揉み消されて転校させられて、がオチのはず。
「まあ確かに、金持ち集団だけど」
「大丈夫、コイツも半端ない金持ちだから」
口を挟んだ桐椰くんと松隆くんとを交互に見れば、松隆くんがクスッと笑う。
「どうも、松隆財閥の御曹司です」
「……はっ?」
松隆財閥……。名字を言われたときはピンと来なかったけど、財閥と付けられて、頬が引きつった。ヤバい、日本一とは言わずとも、上から数えて五本の指には入るほど大きい、正真正銘の財閥だ。当然のように金融もインフラも百貨店も抱えている。なんなら、私の父親が務める会社だって松隆グループ系列会社だ。
「そ、その御曹司……?」
「そ。まあ、兄貴いるから御曹司って言うと変かもしれないけど」
そうか、御曹司っていうと普通は跡取りだから長男、総二郎という名前からすればきっとこの松隆くんは次男……。って、そうじゃない。
「……つまり、自分も金持ちだから平気ってこと?」
「まあ、簡単に言うとそうかな」
「くだらない……。成金のいがみ合いじゃん」
今時“御三家”なんていうからさぞかし高尚な人たちだと思えば、と呆れ混じりに付け加えた。二人ともそれに対しては何も答えず、ただ松隆くんだけが怪しく目を細めた。
「言っとくけど、私、別に全然お金持ちじゃないよ。普通の家だから。庶民だから。御三家様たちと同じ場所になんていれないから」
「同じ場所に来いなんて誰も言ってないよ」
「じゃあ何で私を連れてきたの?」
ねえ桐椰くん、とソファで寛いでいる桐椰くんに声をかける。試すような目が私を見た。