御三家の桜姫


「笑いごとじゃないからね!? 君達は御三家なんて呼ばれて虐められたことないかもしれないけど、結構酷いからね!?」

「そうだな、だから、守ってやるよ」

「は?」


 不意に松隆くんの声のトーンが変わった。


「守ってあげる。俺達、御三家が」


 ゆっくりと繰り返された言葉に、ゆっくりと瞬きする。


「え……何言ってんの……?」

「言っただろ? 俺達御三家は、生徒会の敵対勢力だって」


 松隆くんは半分後ろを向き、陽光でその表情を半分隠した。その姿は、どこか何かの秘密を隠しているように見えた。


「松隆財閥が本気を出せば、こんな学校なんてすぐに買い取れる。だから生徒会も俺達を潰すなんてできない。ただ、俺は松隆財閥に静観してほしいって頼んでる。だから俺達は自分達の手で生徒会を潰すしかない。そして、生徒会が一目置くしかない御三家の仲間に、一般生徒は手を出せない。生徒会に逆らえずに虐めの波に乗ってるやつがほとんどだから。どう?」


 取引しよう、と。御三家は生徒会から私を守れるのだと、そう説明した上で、松隆くんはその契約を持ちかけた。


「生徒会に三週間虐められても登校し続ける根性、もしくは登校し続けないといけない理由があると見た」


 図星をつかれて、思わず押し黙った。松隆くんの目は「当たりだね」と言わんばかりに煌く。


「だから桜坂が安全に学校生活を送れるように、俺達が守ってあげる。その代り、桜坂は俺達御三家の仲間だ」

「……仲間になって、なにすればいいの」

「一緒に生徒会を潰してくれればいい」

「……具体的に何をさせるつもりなの」

「さっき言ったろ。男じゃ入れない所に入ってもらうし、男じゃできないことをしてもらうって。あ、怪しいことはさせないから」


 それこそ妖しく笑いながら、松隆くんは言った。


「乗る?」

「……でも、御三家にはもう一人駿哉って人もいるんじゃ……」

「駿哉に確認はするけど、桜坂なら大丈夫じゃないかな」


 俺達が探していた女子には条件がいくつかあったんだ、と松隆くんは指を一本立ててみせる。
< 17 / 108 >

この作品をシェア

pagetop