御三家の桜姫

「ま……、その真面目さで生徒会役員に立候補したはいいけど、まさかあんな形で逝くなんてな」

「そっか、その時は制度違ったんだけ?」

「あぁ、その制度案が決定したから、余分な寄付金出さない透冶は役員からおろされたんだ。まぁ、俺達はそれが名目だと思ってるけど」


 生徒会が私の想像以上の権勢を振るっていることが分かる言葉だ。緊張で姿勢を正した私に、桐椰くんは「それより」と教室の一点を視線で示した。


「お前、アイツとどうなってんの?」


 その視線を辿って見つけたのは、有希恵。


「……どうもなにも、暫く話してないよ」

「つか、文化祭、クラスと部活の出し物あるんだけど、お前、部活は?」

「……生徒会に虐められてる私を入れてくれる部活なんてありませんでした」


 ただでさえ二年からの入部で気まずかったし、仕方なく一年生の仮入部期間と被らせて入ろうと思ってたのに生徒会に虐められ始めたし。深い溜息と共に桐椰くんの机に額を押し付けた。冷たくて気持ちがいい。


「ま、でもそれなら俺らには好都合だ。しっかり働けよ、下僕」

「え……私何かするの……?」

「生徒会が何か用意してるに決まってんだろ。わざわざ”こいこい”なんてつけやがったんだから」


 「多分『勝負はこれから』とでも言いたいんじゃねーの」と桐椰くんに言われて、なるほどと頷く。


「桐椰くん、お勉強できないのに頭は悪くないね!」

「うっせーな! そういうお前はどうだったんだよ!」

「へっへー、初の第一考査にして学年八位をいただきました」


 花咲高校では成績が貼り出されることがないので、各自がこっそり成績を確認することになっている。ただ、成績が良い生徒は寄付がなくても先生が甘くなるらしいので、なんとなく成績の良い生徒は分かるんだ、と松隆くんが言っていた。
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