御三家の桜姫

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 目の前の桐椰くんは苦虫を噛み潰したような顔をする。


「お前は頭は良くないのにお勉強はできるタイプかよ」

「なんて失礼な! 私は頭もそこそこ良いです」

「だからうぜぇって言ってんだろ、そのキャラ。……この調子じゃ、俺達はクラスとまるっきり関わりなさそうだな」


 桐椰くんが私の頭上を通り越して見た黒板を振り向くと、和風喫茶とお化け屋敷と書いてあった。


「え? 出番ないの? 人要りそうなのに?」

「どっちに出るか名前書けって紙回ってんのに、俺達には回ってないだろ」


 お前頭悪いな、と付け加えられた。でも確かに、明らかに私達をスルーしたとしか思えない席に名簿が回ってる。


「……桐椰くん」

「何だよ」

「これは新手の虐めだと思います!」

「新手じゃねーだろベタだろ」

「うっ……」

「まぁハブってくれるならありがてぇじゃん。俺らは俺らがしたいことに専念できるってことで」

「桐椰くん実はポジティブですか」

「このクラスの活動に興味がないだけ」


 打てば響くような屁理屈。ああいえばこういう。少し悔しい気分になって、伏せた桐椰くんの金髪を引っ張る。

 ……すこし、”彼”に似ていた。


「……なんだよ」


 不機嫌そうに顔を上げた桐椰くんに落胆して、それでも表情(かお)には出さず、別の感情を浮かべて見せた。


「だってー、桐椰くん私より成績悪いくせに偉そうだもん。ねぇねぇ、何番だったの? 教えて教えて? 笑ってあげるから」

「一七番」

「意外といいじゃん! この似非(えせ)ヤンキー!!」


 でも、そっか、先生が甘くなる条件はお金持ち若しくは成績優秀。笛吹さん事件で松隆くんがしたことも、本当は暴力沙汰。それでもって、相手は無名役員といえど生徒会役員。本当なら、先生に何か言われるはずなのに、松隆くんは何も言われなかった。それは松隆くんがお金持ちだから。それと同じだ。
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