御三家の桜姫



 その後、ごく自然に第六西へ行き、松隆くんと桐椰くんがソファ、月影くんがパソコン前の椅子に座った。松隆くんは腕を組んで溜息をつく。


「消去法で決めよう」

「何を?」

「桜坂と組む相手を」

「えっ、消去法は酷くないですか? こんなに可愛い私とカップルごっこできるんだから――」

「とりあえず、俺は選択肢外だろうな」

「そうだね、駿哉はさすがに向いてなさすぎる」

「ってことは俺かお前か……面倒くせえな」


 みんな私のことを無視だ。酷い。


「あとは蝶乃と鹿島を見張る役も考えないといけないから、それとの兼ね合いかな」

「……蝶乃の隣かコイツの隣か……?」


 桐椰くんの顔がひきつった。究極の選択でも迫られているかのような顔だ。


「そんなに私とカップルごっこ嫌なの?」

「嫌に決まってんだろうが、お前|鈍(にぶ)そうだし」

「失礼な! 確かに運動神経はあんまり良くないけど!」

「ただ、あの女の近くにいるのも……」

「桐椰くんと蝶乃さんって何かあったの?」


 桐椰くんは蝶乃さんを毛嫌いしているし、蝶乃さんも桐椰くんにはやたらめったら突っかかる。それを思い出しながら何の気なしに尋ねたつもりが、第六西の空気が凍った。というか、桐椰くんが一人だけ硬直した。なんだろう、そんなにマズイこと聞いたかな? もしかして桐椰くんの地雷か弱味?

 わくわくと目を輝かせながら身を乗り出すと。


「ああ、知らないのか。元カノなんだ」


 ……。……え?

「え!」

「おい言うなよ……」


 思いがけぬ過去の事実に唖然とした、というか耳を疑った。元カノ? とてもじゃないけど相性が悪い気しかしない。そもそも二人の態度だってそんな風には見えなかったし、いやビジュアル的には美男美女でお似合いだけど……。

| (.)

< 81 / 239 >

この作品をシェア

pagetop