第一幕、御三家の桜姫
「え、それ本当……? 私、丸二日間遼くんと手繋ぐの?」
「だからくん付けやめろって言ってんだろ! おい、それどういう仕組みなんだよ」
「厳密には手を繋ぐ訳じゃない。初日に文化祭委員がカップルの両手首を固定するだけだ」
「同じだろ!」
「拘束時間はイベント開始の午前十一時から午後三時までの四時間だ。休憩を申し出ればその間は外してもらえる」
「んなの当たり前だろ!」
吠えるように文句を返す桐椰くんに、月影くんは話を進めたくて迷惑そうな顔をする。
「決まったことに文句を言うな。大体、名前で呼び合うくらい仲良くなったんだろう」
「それは流れで――」
「で、イベントの内容だが」遂に桐椰くんを無視して「校内スタンプラリー形式で進んでいくが、二人で同時にじゃんけんに勝つなど、イベント自体は非常に簡単かつ単純だ」
机の上には箇条書きのメモが置かれた。どうやら今年のイベント内容が書き出されているらしく「事前に決めておくことはこれだね」と松隆くんが堂々と八百長宣言をしながらペンで丸をつけた。
「『相性はいかが』、内容は好みの一致度。十問お題が出て、その答えを各自が別々に書く。その回答が一致すれば十ポイント、計百ポイント獲得できる。一日目で差がつくメインイベントと言っていい」
「なるほど。遼くん、おでんの好きな具は?」
「卵」
「えっ白滝でしょ!」
「はいそれゼロポイント」
早速不一致。松隆くんの厳しい声が笑顔と共に飛んでくる。
「二人共、どっちかに合わせろって言ってもどうせ聞かないでしょ。じゃんけんして勝った方の好みに合わせて書いてね」
リーダーには逆らえない。桐椰くんがぐっと唇を引き結び、じゃんけんすべく手を掲げる。
「はい、じゃーんけん……、というわけで遼が桜坂さんに合わせてね」
「くそっ」
「じゃあおでんの具は白滝だね!」
「そんな感じで好きなもの聞き合いっこしといてね。幸いにも君達同じクラスだし」
次、と松隆くんが一日目のイベントその二を指す。
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