第一幕、御三家の桜姫
「スポーツで得点を競う。スポーツの内容は当日、その場で引いたカードで決まる。テニス、バドミントン、バスケ、色々あるけど。チームワークが大事だからこれも練習しといてね」
「え、ちょっとハードじゃないですか……? 男の桐椰くんの体力に合わせるとか……」
「一日目は以上。他は当日どうにかなるから目を通しといて」
伏し目のままさらりと私の意見を流した。松隆くん……言動は丁寧なのに態度が暴君だ……。
「次、二日目。最初に説明したのと同じようなイベントだ。最高獲得ポイントは百点。『お互いのことどのくらい知ってますか』――今まで出題されたのは身長、誕生日、と比較的簡単」
「遼くんの誕生日っていつ?」
「十二月五日」
「私は三月二十八日だから覚えてね」
「他にも出身とか特技とか聞かれるから準備しておいてね。二日目はそれだけかな」
ていうか、三年前のイベントの細かい内容なんてどこから仕入れてくるのかな……。胡乱な目を向けてる私に気づいた松隆くんが顔を上げる。
「ああ、生徒会室にある文化祭資料の中に事細かに書いてあったよ」
「……窃盗」
「拝借しただけだよ」
なんでこんな人が御三家のリーダーなんだろう……。
「三日目はコンテストだけ。カップルアピールポイントもあるから考えてね」
「は?」
「え?」
「カップルアピールポイントもあるから考えてね」
同じセリフを繰り返されるけど、違う、聞き取れなかったわけじゃない。
「あ、あのう……アピールポイントとは……」
「どこが好きとか、何がきっかけとか」
「ああ、現実味のある自信の持ち方がウザいとかな」
「それ悪口! 嫌いなところ聞かれたらそう答えようね! 因みに私は遼くんの不愛想で女子でも構わず泣かせにかかるの良くないと思います!」
「それも悪口だね。何、女子泣かせたの?」
「未遂だっての。つか、質問したら勝手に泣き出しただけだしな」
「あ、あと上着着ないでいつもパーカーなのもよくないと思います」
「動きにくくて嫌いなんだよ」
「二人共、優勝する気ある?」
松隆くんの笑顔の裏に吹雪が見えた。思わず背筋を伸ばすけれど、慣れてるのだろう桐椰くんは頬杖をつく。
| (.)