第一幕、御三家の桜姫
「アピールポイントって要はあれだろ、観客をいかに共感させるかだろ。なら少女漫画のぐっとくる名台詞まとめとか見ようぜ」
「遼、怒るよ?」
松隆くんの怒りもごもっとも。静観していた月影くんが呆れたように溜息をついた。
「言っておくが、蝶乃と鹿島のカップルは去年圧倒的大差で優勝してる。本気で準備しておかないと足元にも及ばないぞ」
「それってコンテストの票数だろ? 一日、二日目のイベントでポイント稼げば、票数なくても勝てるんじゃね」
「一票につき百ポイント獲得って分かっててそれ言ってる?」
「は!?」
平然と言い放つ松隆くんとは裏腹に、桐椰くんは苛立ちに任せて机の上のメモを叩いた。
「それ二日かけて優位に立ってもたった二、三票でひっくり返るってことじゃねぇか!」
「そうだよ」
「誰だよこんなくだらねぇイベント考えたの!」
「生徒会だよ」
「潰す」
「だからそう言ってるだろ」
打てば響くような応酬だった、さすが幼馴染。それはさておき、ということは実質的には三日目以外は意味がないということだ。
「じゃあ遼くん、一、二日目は捨てて良い所探しに徹しようよ」
「文化祭まであと二週間だろ? 一日一長所ってか?」
「あー、なるほど、十四個も見つければ勝てそう!」
「冗談だよ馬鹿。一日一個も見つかるわけねぇだろ」
「一日一個くらい見つけなよ。可愛いとか愛らしいとか、汎用性の高いワードと桜坂の挙動を組み合わせれば適当にどうにかなるでしょ」
「松隆くんも私の可愛さを理解する気がなさそうなのは気のせいですか?」
「あと、一日目と二日目を捨てようって発想もやめてね? 三日目、ステージに上がるときに二日間の獲得ポイントは映るから。ズタズタの凸凹コンビに票が入るとは思えないし」
また無視だ……。最近、私の扱いがどんどん下僕じみてきている。いや、下僕なんだけど。
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