ゆれて、ふれて、甘言を弄して
翻弄されながらも、不死原君の模擬面接も無事に終わって、桐生君が私に関心するような声を出す。
「へえー……びっくり。梨添さんって、実はめっちゃプロ並みの仕事できる人なんじゃん?」
「…いや、はは。そんなことは、」
あるよ、うん、ちょっとはあるよ?自分を褒めるべきところは。
最初は桐生君だけだったから適当に流すつもりだったけど、不死原君が入ってきたらそりゃあ本気で対応しないとダメでしょ?
だから相当気合入れて挑んだ模擬面接だったんだからね?
「なんかどんなに年増でも、無理して派手な恰好してても、中身干物でも、仕事出来る姿みるとグッとくるよなぁ~。なんで派遣やってんの?正職に就けば?」
「ねえ、4分の3はディスってるよね。」
で、私と桐生君の会話に、さらりと不死原君が乱入する。
「桐生のグッときた情報は、逐一桐生の彼女に知らせようと思うんだけどどうだろう?」
「は?…へ?…なに??」
「ペアリングをわざわざ小指にして彼女がいるのかいないのか分からなくしてるなんて、器用なやつだよな桐生は。」
「は、はあッ?なっ、…、そんなんじゃねーし?薬指だときついから小指にしてるだけだし?てか性格わりーなお前!」
「学祭の日に講堂で俺を一人きりにした罪は重いよ?」
「やだ、この子根に持つタイプ!」
ああやっぱり桐生君、彼女いるのを誤魔化すために小指にペアリングしてたんだー。
って違うよそこじゃない!今気がかりなのはそこじゃないじゃん!
…不死原君、もしかして今、桐生君に嫉妬…した…んですか?
もう自分の中でこうやって思い上がるだけでも恥ずかしすぎる。
しかも桐生君はただ私をからかってきただけなのに。そんな嫉妬する要素どこにもなかったじゃん!
いい年したバツイチ、ほら行け!干物力の見せ場!