ゆれて、ふれて、甘言を弄して

「…でも私は遊ぶ時間がほしいからさ。正職に就くと残業もあるし、忙しくて全然遊ぶ暇ないでしょ?だから適当に派遣やってんの。」

「遊ぶって梨添さんは何して遊ぶの~?ゲートボールとか?」

「麻雀。」

「……はあ?ちょい惜しいじゃん俺!」

(はい)積んで立直棒(リーチぼう)投げるのが私の癒しなの。」


ごめんね不死原君。本当はためらいなくピアノって答えるべきところなのに。

少しだけ後悔はある。

でもこれで少しは私に幻滅しただろうし。てか幻滅もなにも、最初からなんとも思われてないだろうけど。



「つまり梨添さんは、
"立直一発ツモ純全帯ヤオ二盃口ドラ4(リッソクツモジュンタンリャンペードラフォー)"の役満(やくまん)で上がることが出来ると?」

「ええ何そのセンスある数え役満!二盃口(リャンペー)?!」

「この間俺が上がった役満です。」

「いやあさすがだね!ピアノだけじゃなく麻雀のセンスもあるなんて!」


……って、麻雀、知ってるの?なんならやってるの??

え?そのピアノを滑らかに奏でる指で?麻雀牌《ジャンパイ》つかんじゃってるの?

なにそれ、見たいじゃん!



「不死原君て、麻雀やるんだ…。」

「もちろん、大学生ですから。」
 
「…え?そうなの?」

「男子学生なら当然の(たしな)みですよ?」

「あ、俺はこないだ初めて不死原に教わったけどね~。」


そうなんだ。知らなかった。不死原君て麻雀も教えられるんだー!へえ~!

っていやいや学生の当然の嗜みだとしても、まさかピアノと麻雀両方やってるとか想像できると思う?




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