ゆれて、ふれて、甘言を弄して
お昼、職員専用の休憩室で、ワゴン販売で買った唐揚げ弁当を食べていた。
この唐揚弁当に入っているポテトサラダが絶品なのだ。イモの味が濃くて、唐揚げみたく、うま味調味料で誤魔化していないのがいい。
そんな私の前で食べている金本乙花さんは今日もダイエットメニューだ。コンビニのサラダとコンソメスープのみ。
合わせて200カロリーにも満たない食事なのに、26歳女の活力は一体どこからやってくるの?
「でも梨添さん、まだ33でしょ?30代前半なんて全然若いじゃないですか~。」
「まだ31ですけど?」
「うちのいとこのお姉ちゃんなんてもう39ですけど、今だに2次元アイドルの追っかけとかしてるんですよ?」
「金本さん、人は年を取れば取るほどふか~い世界に逃げようとするものなのよ。」
「…梨添さんて見た目綺麗系なのに、中身は悟りを開いた干物って感じですよね。」
「干物だけに開くって?うまいこと言うね。」
お局の舘松さんとは違って、正職員の中でも気楽に話が出来るのが金本さん。
いつも肩までの毛先を綺麗に巻いていて、職員として許される範囲のネイルもメイクも、毎日のことなのに抜かりがない。顔も癒し系アイドルに似ていると学生の間でもてはやされている。
そして彼氏はここ2年ほどいない。"できない"のではなく、"厳選"しているのだとか。