ゆれて、ふれて、甘言を弄して
「…なんていうかさ、柏木さん、いいイメージで通したいならせめてやることやってから遊んだら?」
「……え、」
「だって提出期限ってもう2週間過ぎてるよね?学費払ってもらってる親の身にでもなって少しは考えてみなよ。」
「…なっ…」
こういう外面だけでいいイメージ持たせようと必死なやつ見るとイライラする。特にその中身とのギャップがあればあるほどに。
だから俺のストレス発散材料でずたずたにしてやりたくなる。どうせどうでもいいやつだし。
「大学に長居して男をたぶらかしている暇あったら、とっとと帰ってレポート書いたら?」
「……っ」
泣きそう?それともムカついた?でも何も言い返せない?
だよねえ。
誰もいない空教室で教授とヤッてるの、俺に見られちゃってるしねえ。
睨みたいのに睨み返せない、その厚いツラを鼻で笑い、彼女がきびすを返すよりも先に、俺がその場を退散した。
悪いけど俺はサディストとかそういったアブノーマルな類ではない。
ただの発散発散。
羊質虎皮。牛首馬肉。そういう外身だけの人間が嫌いだから、俺のテリトリーから一刀両断しているのだ。
だから大学構内の一定数は、今日も氷点下5度の俺を遠巻きに見ている。
「よっ、サイコパス王子!今日もサイコパスで安心したわ。」
桐生が俺の無防備な後頭部を軽く叩いて、昼の挨拶をした。
柏木さんとのやり取りを遠巻きに観察していたらしい。
「…サイコパスじゃないし。ただの性格悪い人間なだけだし。」
「そりゃ悪かったな、365重人格者!」
「せめて王子は残しといて。」
「365重人格王子!なにこれ超言いにくっ!」
桐生はさっきの柏木さんとは"逆"のタイプ。
外面はアホそうなのに、中身はもっとアホ。
何をもって"逆"というかは俺にも分からない。