ゆれて、ふれて、甘言を弄して

桐生の彼女はバイト先の3個上の人らしく、俺にはことあるごとにその自慢話をしてくる。


「昨日マイカと家電の話になってさ~、マイカの実家が『いまだに黒電話だ』とか言うから『黒電話って何?』って返したらすっげぇ驚かれてさぁ~。」

「へえ。」

「これってやっぱジェネレーションギャップだよなあ~?」

「いや誰が聞いても桐生の知識不足。しかもトリビア並に"へえ"って感じの話だね。」

「え、もしかしてこれって教養試験に出る?!」

「……出たらお前に1万やる。」

「うっそマジ?!言ったな!」


最初マイカという名前を聞いた時は、どこのICカードかと思った。


彼女はなぜ桐生という男を彼氏に選んだのか。がんばって100文字以内で簡潔にまとめてほしい。



「お、梨添さんだ。」


桐生の言葉で前を見れば、奥の階段から降りてきたのか梨添さんが歩いて来る。


毎日毎日飽きもせず短いタイトスカートにミュール?履いている癖に、ちょくちょくつまずいているのが面白い。


この1階の窓際には、何台かのテーブルと椅子がセットで置かれていて、ロビーの休憩スペースのようになっている。


その窓際の席に座る4人組の男が、彼女をジト目で見つめ、ひそひそと何かを話していた。


冷やかしの言葉でも喋っているのかとも思ったが、どちらかというとあれは別の方が大きい。えろ目線に近い。


彼女は31歳らしいっちゃらしい、でも学生が思い描いていた31歳よりは若い女性だ。






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