ゆれて、ふれて、甘言を弄して
揺れる黒髪の中側にチラ見えするピンクブラウンのインナーカラー。無理矢理感のあるタイトスカートとミュール。
俺の透視スコープで覗けば、慣れていないのかバレバレ。真面目の上に、無理やり派手な皮を被った女性にしか見えない。
「梨添さんてめっちゃ悪目立ちだよな~。
『いくらでやらしてくれんのかなあ?』って真中が言ってたし。」
「…真中って、国際文学の真中?」
「そそ、国文ゼミの真中。」
国文ゼミの真中とは熟女好きの男だ。彼はアブノーマルな性癖を包み隠さないことで、なるべく多くの熟女を周りから紹介してもらおうというスタンスなのだ。
国際文学ゼミの祖父江先生が50代の美魔女で、真中が先生目当てでゼミを選んだのは有名な話。
50代と31歳を一緒にするなよ真中。"真中"は一体どこのド真ん中をいくんだ。名前負けしてるぞ真中。
梨添さんは俺がいることに気づいていて、俺の元まで来てくれると思っていた俺は、軽くズボンの太もも辺りを払った。
さっきまで外のベンチに座っていたから、ほこりがついているとまずいと思って。
でも彼女が用があったのは、1階にある小さな購買部で、文具をいくつか買ってすぐに向こうに戻っていってしまった。
桐生は後ろから呼び止めれた友達と談話中。
誰にも気付かれないよう、鼻からため息をついて、彼女の背中をぼうっと見送る。