ゆれて、ふれて、甘言を弄して

風見さんのような毒で返して、不死原君を怒らせる戦法は大人として間違っている、と常識的に考えてしまったことをすぐに後悔した。


顔は笑っているのに、笑っていない声だ。バジェットガエルになっている場合じゃない。


今まで私を持ち上げてくれていた不死原君は、いつの間にか私を見下ろす目線に立っている。


風見さんのような毒で返せば、きっと毒で制されるだけ。

で。もがいている間にそっと引きずり込まれるのだ。そういう食虫植物がいたことを思い出した。



「こういうのって…?」

「こういう、煩わしい駆け引き、みたいなの。」

「……駆け引き?…って、これが?」

「ほら、そういう分かってないフリ、みたいなのとか。」

「……」

「駆け引きって、俺、嫌いなんですよ。」


不死原君の爪先は、いつだって私の方を向いていた。

今もそう。

なのに、ゆさぶっていたのは私の方だよ?今日だっていくらでも事前に連絡して断れたはずだよ?なにノコノコやってきてんのさ。


とりあえず私は毒は吐いてないけれど、とりあえず毒で制されたって仕方ない。


ただ、ちょっとタンマ。まだその覚悟ができてないから。




「梨添さん、分かり易くいきましょうか。」



タンマタンマ、不死(笑)(ふじわら)くんっ









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