ゆれて、ふれて、甘言を弄して
「ごめん、気持ち悪かった、よね…。」
私の言葉に、ふいっと視線を反らす不死原君。ふいっと。なにそれちょっと好き。
はい、調子に乗るとこういうことになるという例です。
いたいけな男子学生ののど仏を触りたいとか、馬鹿か私。
よくあるやつだ。
向こうがなついて来てくれるから、自分は好かれているのだと勘違いして、今度はこっちから必要以上に攻めていけば、向こうが一気に引いてしまうというパターン。
つまり、不死原君が私に迫るのは合法で、私が不死原君に迫るのは違法。
分かり易くまとまったところで、さっさと退散しようと思う。
でも、私の指は彼に掴まれたままだった。
「俺をゆさぶって楽しいですか。」
「な、」
『なにが。』を言おうとしたところで、
不意に唇を奪われまして――――
ふいっと。じゃなくて不意にね。
――――――え
何年だ。
何年ぶりのキスだ――――
記憶を物凄いスピードで遡る。
でも。
私の指を掴んでいた彼の手が徐々に開いて、私の手も自然と開いて。ほどかされる。
気付けば、前で不死原君と手を繋いでいる状況。
って、なにこれ?金曜ロードショーのオープニング?
ヒーターで乾燥していた唇が離れて、蕩けた目つきでじっと私を見据える不死原君。
あああぁぁあぁあ――――
鼓動がようやく峠道でトップスピードを迎える。
唐突に頭文字Dが見たい。