ゆれて、ふれて、甘言を弄して
たまたまその駅には、年代やシーンを問わず使えるファッションストア、ユニプロがあって、とりあえず寒さを凌ぐためにそのお店に入った。
で、暖を取るために入っただけでも、見るとつい買ってしまいたくなるのが『衝動買い』という憎いやつ。
ほんと不死原君ののど仏押したくなるほどの衝動だよ、と思いながら肌着やルームウェアなんかを見ていると、毎年必ずこのお店で見かける定番のフリースに出会った。
こうして毎年見かけているものなのに、私はフリースを1着も持っていない。
無意識に、まあ絶対来年もあるだろうし、今買わなくてもいいか、と思っているから今まで私は買おうと思わなかったのだろうか。
「もしよろしければ、ご試着もできますので。」
店員さんにショッピングバックを渡された。
気付けば私は、フリースを3着も左手に持っていて。で、右手にはスマホ。
来年はもうないかもしれない。という可能性を、ここにきて初めて考えてみる。
『不死原君、今3年生の君は当然4年生になって就職して、知らない可愛い女の人もしくは綺麗な女の子といい感じになって、いい恋人になって、いい夫婦になって、いい孫の世話をして、いい老後を迎えてしまうのでしょうか?でもそれって、凄くいい人生だから、私の出る幕ないじゃん』
という不死原君のライフプランと口惜しみのメールが今私のスマホには保存されているのだけれど、もっともっと貪欲にならなきゃいけないのかもしれない。