ゆれて、ふれて、甘言を弄して
差もギャップみたく萌えの対象になればいい
違う違う、そもそも私はバツイチで彼はまっさらな大学生。
私は派手な恰好をした不真面目に生きているおばさんで、彼はセンスと気品を兼ね備えた王子様のような存在。
彼が本気で私なんかを誘っているわけない。
きっとお金に困っていて、美味しいものでも奢って貰おうという魂胆なのだろう。
じゃあなぜ私たちのような差のある男女が出会ってしまったのかと言えば、単純に彼が私の職場にいるからだ。
「梨添さん~!彼、金融会社志望なんだって。模擬面接お願いしてもいいー?」
「はい!了解です!」
ここは大学の就職センター。就活生の就職を支援斡旋する部署。
たまたま※キャリアカウンセラーという資格を持っている私は、ここでそのネームバリューを役立てている。
いわゆる大学職員という職業。
今年の4月から働き始めて、気付けば秋と冬の間になっていた。
今私を指名してきたのは、正規の職員、課長代理の舘松さん42歳。既婚者。
もうここではお局様で、この大学から"お茶出し"の仕事が失くなったのは彼女のお陰らしい。
私のバツイチの内情も秘密にしてくれている、頼れる先輩だ。
ただ仕事には熱心なため、私の元旦那が金融関係に就職していたことを知っているせいか、今、私が指名されたのだ。
※キャリアカウンセラ=
スキルや知識などの特性から、一番いいキャリアを目指すヒントを探して、キャリアデザインを手助けする専門家のこと