ゆれて、ふれて、甘言を弄して

で、こういう時に限って、カーテンコールかってくらいに登場人物がやって来るのだ。


「あー!村瀬先生お久ぶりですぅっ!梨添さんも!30分ぶり!」

「村瀬先生って5限授業じゃなかった?こんなとこで油売ってていいんですか?」


頭の中で蒲田行進曲が流れる。


金本さんと、風見さんだ…。

なんでよりによってこの2人か。


しかも金本さんが私を大きな声で名指しするもんだから、不死原君に気付かれたっぽい。組んでいた足をさっと地面につけたのを、私は見逃さなかった。


「5限までまだあと7分あるから。」


革の腕時計を見て、またすぐにメンソールを吸い始める村瀬先生。マイペースだ。

でも私の心臓は、ゆらりゆらりと揺れる煙に反してぷるぷるチワワ。


「風見さんとちょうどそこで会ったんですよぉ。そしたら村瀬先生と梨添さんを見つけて。」


風見さんと一緒に帰ろうとしていたわけじゃありませんよ?とちゃんと弁解する金本さん。


村瀬先生が煙が皆にいかないようにと、一歩後ろに下がる。


余計に不死原君が丸見えになって。で、金本さんが当たり前のように声をかけた。


「あ!不死原君じゃない?!久しぶりぃ~!」


カップル相手でも平気で声をかける金本さん。

そのアグレッシブさ、ジャングルクルーズを生身で泳いでいくようなものだ。




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