ゆれて、ふれて、甘言を弄して
ここで思ったのだ。
ああ、これはクリスマスイヴを断った私への当てつけなのかと。
いつも私がだんまりするのをそのまま利用して、私が場を悪くするみたいな演出を影でこそこそと台本から作り上げて。
あっちの男もこっちの男も断った私は、自分の何がいけなかったのか、一体何が悪かったのかと、もうすっかり自暴自棄になっていた。
涙目になるよりも、気がつけばべらべらと喋っていたのだ。
この寒空の中、余計に寒くなるようなことを。
「不妊治療の末にできた赤ちゃんの検診で、性病に感染していることが発覚したんですよ。」
「……え…」
「なんか、私ばっか頑張ってるのが馬鹿らしくなっちゃったんです。」
「……ええ、と…?」
開き直った大人が、周りから惨めに見られるのは分かっていたはずなのに。
いらいらが止まらず、発散するために喋ってしまった。
風見さんも村瀬先生も、たばこを持つ手は止まったまま。
金本さんは、まさに絵に描いたような慌てっぷりで、私を止めようともしていた。
でも私は、もう止まらなかった。
「で、赤ちゃんに移したくないから中絶して、離婚したんです。」
「…」
「って、すみませんね場を荒らして。ドン引きですよね?はは。じゃあ私、帰りますね?」
見えている。
不死原君が私を見ているのが、見えている。
きっと、ここにいる誰よりもドン引きだったのは不死原君だ。