ゆれて、ふれて、甘言を弄して
わざわざ言うことでもないけれど、こうやって間接的に伝える形になってごめんね不死原君。
21歳には重すぎて、とてもついていけない話だよね。
あれだけネオンカラーの名刺をコレクションしてれば、そりゃ性病も移されるよね。
旦那が遊び歩いてたこと、知っていたはずなのに。
それをちゃんと問い詰めて、もうやめてって私が伝えられていれば違っていたかもしれないのに。
実際に移されてからそのことに気付くなんて、ごめんね。
馬鹿で未熟なママで、本当にごめんね。
何度そのことを繰り返し心の中で唱えただろう。
『今の段階で赤ちゃんに移る可能性は極めて低いですが、すぐにご主人と一緒に抗生剤を飲んで下さい。』
最大限最悪の可能性を伝えるべき医者が、極めて低いといえば、それは確かに低いのかもしれない。
でも私は、その0.1%が気になってしょうがなかったのだ。0.1%の可能性を一度考えてしまえば、それは無限大の可能性になる。
旦那には妊娠したことも言わず、私が勝手に中絶して、浮気や風俗の事実をつきつけて離婚した。
不妊治療の性病検査で引っかかったと伝えて、とにかく、少しでも私という女を彼の中から消したかった。
もし私が中絶していたことを伝えていれば、彼に離婚を引き止められたかもしれない。
でももう嫌だった。
気持ち悪かった。
とにかく色々溜まっていたものが爆発した。
彼に対する拒絶反応が出たのだ。
だから、妊娠のことも中絶のことも言わなかった。
目に目一杯の涙をためながら、1人で水子供養に行ったことが、今でも昨日のことのように思う。