ゆれて、ふれて、甘言を弄して
「でもあの人って実は、メンタルヘルスが縦横無尽なギャップの激しいツンデレキャラかもしれませんよ?」
「語彙が渋滞してるね。」
「要はメンヘラでツンデレって意味です。」
「ええと、合わせてメンツル?」
「麵つゆみたいに言わないでください。メンデレですよメンデレ。」
資料がたくさん詰まったダンボールが重くてそれどころじゃない。もうメンツルでもメンデレでも何でもいいよ。
ところでアバンチュールといいワンナイトラブといいメンデレといい、一つもひらがながないのは何でだ?
日本人て恥を隠すためか、少しでも分かりにくい横文字を使おうとする癖に流行らせようとするから難しい。
日本人て皆メンデレじゃないの?
「で、そのメンデレさんから梨添さんに。はいこれ。」
「……え?」
金本さんから渡されたのは、コ-ラ飴。昔懐かし、駄菓子屋でよくみかけた10円飴の仲間だ。
「なに、これ。」
「なんでしょう?…よく分かりませんけど、梨添さんにこれ、あげといてって風見さんに頼まれたんです。」
「……10円飴を?」
「10円なんですかそれ?」
金本さんはこの10円飴を知らない世代なのか。
サイダーとコーラが一番メジャーな10円飴。こんな小さな包装紙なのに"当たり付"なのが粋。
お詫びなのかなんなのか、風見さんが益々分からなくなったけれど、詰まる所やっぱりこれは皮肉なのだろう。
これが古めかしい駄菓子の産物だということは、金本さんは知らなくて私には分かるのだから。
風見さんへ
相手にされていないと感じたときは、10円飴を渡すよりもカードの支払いを滞納するといいですよ?ひっきりなしに電話かかってきますから。