リライト・ザ・ブルー
「それに、英凜がタイムリープしてくるくらい泣かせてるみたいだし。あそこまで言えば告白くらいするかと思ったんだけどな」
「……やっぱり、未来は変わらないんだろうね」
結局私と侑生の別れがホワイトデーになったように。
「英凜から抱き着いたりキスしたりしたら、なんか変わるんじゃないの」
「キッ……、いや、どうなんだろう……」
「半分冗談。……英凜がしたいことも、そういうことじゃないわけだし」
どういうことだろう? 首を傾げると、侑生も首を傾げた。
「別に、いまの昴夜と付き合いたいわけじゃなくて、未来を変えるために告白したかったんだろ。昴夜がいなくなる未来がやってこないようにって」
言われていることの意味が分からず、思わず立ち止まってしまった。侑生も一緒に足を止めてくれる。
「……どういう」
「……なんだ、自覚なかったの」
苦笑いを浮かべながら、侑生は小首を傾げた。
「修学旅行のとき、英凜は、昴夜を好きだったって言っただろ。……もちろん、いまでも好きなのかもしれないけど……見てて、懺悔とか罪悪とか、そんな感情のほうが強いのかなと思ってた。俺に向ける目が変わったみたいに、昴夜に向ける目も、タイムリープ前と後で全然違ったから」
侑生に言われたことがあった。好きな人の好きな相手くらい、見れば分かる、と。私が昴夜を見る目を見ていれば、私が昴夜に向けている感情が分かると。
その感情が、いつの間にか変わっていた? 自覚がなかったせいで、呆然と立ち尽くした。
「……俺が言うことじゃないのかもしれないけど、英凜、そんなに、過去に縛られなくてもいいよ」
「……でも、私があの日、間違えたんだよ」
返事をする声がかすれていた。
「あの日……私が、昴夜に、言わなきゃいけないことを言わなくて……」
「それを言えなかったせいで、未来が狂うなんて分かるわけないだろ?」
伸びてきた手が、軽く私の頭を撫でた。よく知っている、温かくて大きな手だ。