リライト・ザ・ブルー

 中央駅に着いた後、まだ時間があるからと、DVDを返却する昴夜について行った。その後、私達はもう一度同じ改札を通る。東西線と南北線の改札口は同じだった。

「じゃ、また……学校に行くより前に遊ぶかな」

「かもね。でも名残惜しいから東西線まで行こっと」


 東西線の階段を一緒に降りると、ちょうど電車がきた。乗ろうかと思ったけれど、私も名残惜しくて、一本見送ることにする。車両はしっかりびしょぬれで、外が大雨に変わっていることが分かった。


「やだな、駅から家まで歩くつもりだったのに」

「帰る頃にはやんでるんじゃない?」


 なんの根拠もなさそうな口ぶりだったけれど、昴夜がそう言うのならそんな気がした。

 次の電車がやってくるアナウンスが流れる。まだ昴夜と一緒にいたいのに、でも七時までには帰らないといけないし、と時計とにらめっこして、次の電車には乗ることにする。

 でも、まだしばらく、高校生でいることができるのだから。そう必死にならずとも、来週にはまた昴夜に会える。侑生が岡山から帰ってきて、お土産のきびだんごをみんなで食べようとでも、そう言って。

 十四年後に戻る日が、いつやってくるのかは分からない。もしかしたら、私はこのまま、もう一度十四年間をやり直すのかもしれない。そのときは、やっぱり昴夜を助けることができないのかもしれない。

 それでも、タイムリープする前の自分ほど、過去への後悔に(さいな)まれることはないのだろう。


「そういえば、さっき話したっけ、バックトゥーザフューチャーの、一巻でめちゃくちゃ好きなセリフ」

「聞いてない、なに?」

「これ最後のシーンだと思うんだけど、”There’s no road.”って一言」


 まったく思い出せない。久しぶりに私も見たくなったし、さっき入れ替わりに私が借りればよかった。


「どういう意味?」

「んーとね、デロリアン号ってタイヤ付きの普通の車じゃん。それがさ、ラストシーンだと空を飛べるようになるから、滑走するための“道はない”って博士が言うんだよね」


 そう言われると覚えがある。デロリアン号に乗り込んだ主人公が「でも道がないじゃないか!」と困惑したことに、博士がそう返事をするのだ。


「で、これ俺の勝手な感想なんだけど。あれって、第二部だと未来にタイムスリップするじゃん。てことは、未来にはまだ道ができてないから、これから歩いて道を作っていけばいいから、“道はない”って意味でもあるんだなって」

「ああ、なるほどね」


 タイムマシンに必要な滑走路と、人生の道をかけているということか。やっぱりさっきDVDを借りればよかった。
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