リライト・ザ・ブルー
「“いま”までには、ずっと歩いてきた道があって、その道を戻って別の道を選ぶことはできないけれど。未来はまだ道がないからさ、あっちにしよこっちにしよって、いくらでも道を選べるんだなーって。そういうのも、これがタイムスリップの王道かーって感動したとこ」
「……いいね。英語で見直してみようかな」
「そうそう、だから英語のほうがいいと思う」
「昴夜、映画は字幕で見る派なんだっけ」
「イキりっぽいから秘密ね」
ハーフなんだからイキりもなにもないのに、と笑いながら電車に乗った。
「じゃ、ばいばい」
「んー……」
電車の中から手を振って、昴夜も手を振り返してくれて――扉が閉まるまでのその短い間に、そのまま手を後頭部にあててちょっと考え込む。
「……あのさ英凜」
「ん?」
「……さっき言いたかったのは……過去は変えられないけど、未来は変えられるっていう話で。ん、なんかこう言うとチープなSFっぽくなっちゃうんだけど」
顎に手を当てて考え込む素振りは照れ隠しのように見えた。
告白だろうか。少しだけドキドキした。こんなところで告白されたら未来が変わる。でもそうだ、私と違って昴夜には制約がないし、今までの微細な変化の積み重ねで、もしかしたら変わったものがあるのかもしれない。
未来は変わらないと思ったけれど、いまから私達が付き合って、変わる未来があるのかも――。
「だからほら、修学旅行で言ったけど、侑生のことよろしくねっていうのは……きっと、侑生は、いまの英凜を元気にしてくれるから。俺はずっと、英凜のことが――……英凜が、幸せになっててくれたらいいなって。ずっとそう思ってたんだ、俺」
それなのに、告白ではなかった。
いや、そうじゃない。呆気にとられた私は、そのまま動けなかった。告白ではない、けど、それは。
スン、と昴夜が鼻をすすりながら、ちょっと視線をさまよわせて――もう一度まっすぐ私を見る。笑った顔が泣いていた。
「俺にも、幸せになっていいって言ってくれて、ありがとね。元気でね、英凜」