リライト・ザ・ブルー

 南北線のホームへ向かう階段を、ぞろぞろと人々が上ってくる。電車が着いたのだ。その中に昴夜はいない。転がり落ちるように駆け下り、でも、ホームには電車もない。田舎の駅のホームらしく、人もまばらだった。

 それでも。そのまばらな人影の中に、その人はいた。背が高く、白いシャツと、ブルーのハーフパンツを履いていた。

 後ろ姿で分かるのは、西洋人らしい長い脚と、犬のようにふわふわの栗色の髪だけ。


「……昴夜?」


 呼ぶ声が、震えていた。

 私は、いまの昴夜の顔を知らない。それでも、振り向いたその驚いた顔を見た瞬間に、そうだと確信した。

 飛びつくように抱き着けば、待っていたかのような力強さで抱きしめ返された。

 言葉は出てこなかった。口を開けたら、そのまま泣き出してしまった。子どものような泣き声が、駅のホームにこだました。

 お互いに一言も話せなかった。でもきっとその一言以外、いまの私達には要らなかった。


「ただいま」

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