リライト・ザ・ブルー

 でもこの手の感触に間違いはない。いる。昴夜がいる。この手で掴んでいる先に、昴夜は、ちゃんといる。

 視線を上げると、困惑しっぱなしの顔に見下ろされていた。何か言おうとしているけれど私が何か言うのを待つように、その口は半開きだった。


「……昴夜……あの……」

「う、うん、なに?」


 でも、何から言おう。言いたいことがたくさんあって整理できていないだけではない。

 いま目の前にいる昴夜は、あの日のことなんて知らない。

 実は私は三十歳で、何がどうなったのか分からないけどタイムリープして十六歳に戻っちゃったんだ――そんな説明を昴夜が信じるだろうか。昴夜はおバカだから侑生よりは信じる可能性がある、信じてくれるかもしれない。……さすがにこれは馬鹿にしすぎだろうか。でも私が言えば信じてくれるような気も……いや侑生と同じように頭の心配をされて終わるだけ?

 それでも、もしここであの事件の話を昴夜が信じてくれないとしても、私が「好き」だと一言伝えれば? 昴夜と私は一年生のときから両想いだったのだから、ここで伝えれば付き合うことになるのでは? そうすればあの日はやってこないのでは?

 未来は、変えられるのでは?


「……昴夜」

「うん?」


 両手でティシャツを掴み直し、十四歳も年下の昴夜に縋りつく。私の雰囲気に並々ならぬ真剣さを感じたのか、その頬に朱が散った。


「……あのね」


 好き。私はあなたのことがずっと好きだった。ずっと言えずにいたけれど、ずっと、ずっと好きだった。

 十四年経っても忘れられないほどに、あなたのことが。


「私――……」


 その全身全霊の告白は――声にならなかった。

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