リライト・ザ・ブルー
Re:04 Recognize
修学旅行三日目の夜のことを、私は、私と侑生のXデーと呼んでいる。
その日、私は侑生の部屋に遊びに行った。侑生のルームメイトは昴夜で、でも昴夜は別の友達の部屋に遊びに行っていなかったから二人きりだった。だから何の問題もないはずだった――私の携帯電話に、昴夜からのメールが届かなければ。
そのメール自体は、ゲレンデで撮った写真を送ってくれた、ただそれだけだった。でも私はそれを隠そうとして動揺し、侑生もいい加減に業を煮やした――今度は何があったのかと。侑生は、私が昴夜にキスされたことにも、文化祭後に私が昴夜の怪我を手当てしたことにも気づいていた。
『……英凜はまだ、昴夜を好きだろ』
『……そんなことないよ』
『見てれば分かるって言ったろ。俺を好きになろうとしてるってことまで含めて、なんならそれと表裏一体で、英凜は今でも昴夜が好きだろ』
怒っていると言うには静かすぎる口論を経て、私はベッドに押し倒された。侑生の手は、乱暴さの欠片もなく、淡々と、でも有無を言わさぬ雰囲気で私の浴衣をはだけた。
『いいよ、最後までしよう』
それまでにも胸を触られたことはあったけれど、足の間に手を入れられたのはあの日が初めてだった。
『牧落と付き合ってる昴夜を見てても辛いだけだし、英凜を好きな俺と付き合って、流されて、昴夜のこと忘れたほうが楽だもんな』
侑生と昴夜が割り当てられたホテルの一室、私を押し倒す侑生と、浴衣をはだけた私――そこに、思いがけず昴夜が部屋に戻ってきてしまった。鍵は開いていた。
気が動転していた私は、当時の昴夜の様子をあまり覚えていない。でも少なくとも、侑生から逃げるように部屋を飛び出した私を追いかけてきた昴夜は、怒り狂っていた。あんなものは強姦と同じだ、と。
自分が何を話したのか、あまり覚えていない。でも、なにかを言い過ぎてしまって、次の日の朝に謝罪したことだけは覚えている。
それでじゃあ、侑生とはどうしたのかと言われると、これもまたよく覚えていない。フラれるまで三ヶ月近くあったし、侑生のことだから謝ってくれたのだろうし、きっと何事もなかったかのように付き合っていたのだと思う。
あの頃の侑生は、きっと、私への罪悪感でいっぱいだった。それを思い出す度に、どうして私から決断できなかったのだろうと、私も罪悪感に苛まれる。