リライト・ザ・ブルー
「昴夜に渡すからって、そんな気まずそうな反応しなくていいよ」
「……いやするでしょ」
「言っただろ、俺のせいで後悔の上書きするのはやめてくれって。昴夜に渡すのは俺のためでもある」
「……そう言われても」
「ま、だったら早く別れろよって話なんだけど。……タイムリープのことだけど」
「あ、うん」
話題が変わるとは思っていなかったせいで、一瞬相槌が遅れた。
「……最近少し、すっきりしたんだ」
「すっきり?」
てっきり、侑生は気にしないふりをして気に病んでいるのだとばかり思っていた。
侑生は、フォンダンショコラを食べるフォークを置いた。
「言ったろ、一年のときに。なんとなくだけど、英凜は昴夜を好きなのかもしれないって気付いてたのに告白したって」
「……うん」
「……あのとき、英凜は俺を好きだって言ってくれたけど、それでも俺の中で釈然としなかったというか……英凜がそう言ったんだってことにかまけて、現実から無理に目を逸らしてたんだ、俺は。だから――英凜の気持ちをはっきり聞いて落ち込まなかったといえば嘘にはなるんだけど、だいぶ時間がたって、腑に落ちたというか……諦めがついたって言うべきなのかな。最初から分かってたことだったしな、って」
反応に困って、口を閉じたままでいた。侑生も一度口を閉じて、続ける話を考えている。
「それに、修学旅行のとき、英凜が言ったろ。俺も英凜に他人行儀だった、みたいなこと」
「うん。悪い意味じゃなくて」
「もちろんそれは分かってる。……俺は俺なりに我儘言ってるつもりでいたんだ、英凜と付き合ってること自体がそうだし、それなりにやることやってたし、妬いても隠さなかったし。でもその反面、好きになってもらいたくて必死だった。それを、必死でいる必要がないって分かって、肩の力が抜けたというか。まあ、それを“諦めがついた”っていうんだろうな」
まるで告白でもされている気分だった。侑生が私を好きなことはいい加減理解したのに、その素直な気持ちを改めて聞くことが堪らなく恥ずかしく、じわじわと耳が熱くなった。
「でもホワイトデーに別れることになってたって言うなら、それまでこの関係を享受したい気持ちもあって。それでも、十四年後から来た英凜にわざわざ後悔の上書きもさせたくなくて。なんだかなあ、って――」
そこで侑生の目が私を見る。
「最近考えてた」
私の不安はまるっとお見通しだったらしい。バツが悪くてますます口の開き方が分からなくなった。紅茶を口に運ぶふりをして必死に視線を逸らす。
「……いやするでしょ」
「言っただろ、俺のせいで後悔の上書きするのはやめてくれって。昴夜に渡すのは俺のためでもある」
「……そう言われても」
「ま、だったら早く別れろよって話なんだけど。……タイムリープのことだけど」
「あ、うん」
話題が変わるとは思っていなかったせいで、一瞬相槌が遅れた。
「……最近少し、すっきりしたんだ」
「すっきり?」
てっきり、侑生は気にしないふりをして気に病んでいるのだとばかり思っていた。
侑生は、フォンダンショコラを食べるフォークを置いた。
「言ったろ、一年のときに。なんとなくだけど、英凜は昴夜を好きなのかもしれないって気付いてたのに告白したって」
「……うん」
「……あのとき、英凜は俺を好きだって言ってくれたけど、それでも俺の中で釈然としなかったというか……英凜がそう言ったんだってことにかまけて、現実から無理に目を逸らしてたんだ、俺は。だから――英凜の気持ちをはっきり聞いて落ち込まなかったといえば嘘にはなるんだけど、だいぶ時間がたって、腑に落ちたというか……諦めがついたって言うべきなのかな。最初から分かってたことだったしな、って」
反応に困って、口を閉じたままでいた。侑生も一度口を閉じて、続ける話を考えている。
「それに、修学旅行のとき、英凜が言ったろ。俺も英凜に他人行儀だった、みたいなこと」
「うん。悪い意味じゃなくて」
「もちろんそれは分かってる。……俺は俺なりに我儘言ってるつもりでいたんだ、英凜と付き合ってること自体がそうだし、それなりにやることやってたし、妬いても隠さなかったし。でもその反面、好きになってもらいたくて必死だった。それを、必死でいる必要がないって分かって、肩の力が抜けたというか。まあ、それを“諦めがついた”っていうんだろうな」
まるで告白でもされている気分だった。侑生が私を好きなことはいい加減理解したのに、その素直な気持ちを改めて聞くことが堪らなく恥ずかしく、じわじわと耳が熱くなった。
「でもホワイトデーに別れることになってたって言うなら、それまでこの関係を享受したい気持ちもあって。それでも、十四年後から来た英凜にわざわざ後悔の上書きもさせたくなくて。なんだかなあ、って――」
そこで侑生の目が私を見る。
「最近考えてた」
私の不安はまるっとお見通しだったらしい。バツが悪くてますます口の開き方が分からなくなった。紅茶を口に運ぶふりをして必死に視線を逸らす。