リライト・ザ・ブルー


 修学旅行で泣きながら侑生に謝ったのと同じだった。

 書き換えることのできない過去に対して、私は謝ることしかできなかった。


「……本当に、そんな謝ることじゃないのに」


 昴夜が、仕方がなさそうに笑う気配がした。


「……それに、そんな風に謝るなら俺だってそうじゃん。俺は……英凜がどんな目に遭ったのかなんて、全然気付かなかったし」

「言わなきゃ気付かないのなんて仕方ないじゃん」

「それでも、気付きたかったなって思うの」


 私のことが好きだから。そうは言わなかったけど、そう言われている気がした。


「でも、それなら昴夜が謝ることなんてないよ」

「ね、英凜はそう言う。それと同じ」


 穏やかな声は、いつもよりずっと落ち着いていて、まるでいまの私と同い年の昴夜と話しているかのようだった。

 でも、そんなことは有り得ない。ここにいるのは、十七歳の昴夜だ。


「だから、俺達はお互いに謝ることなんてないんだよ」


 それでもきっと、十八歳の昴夜も、三十歳の昴夜も、同じことを言ってくれるという信頼があった。

 私が好きになったのは、そういう人だった。


「……昴夜、私ね」


 だから私は、私を救ってくれた昴夜のことを、忘れてはいけない。たとえきっかけは些細なものでも、この人が特別なのは変わらない。


「私……ずっと……、ずっと、ちゃんと、ブックマーカー大事にするからね」


 それが何の話か、いまの昴夜に伝わるはずはなく。


「……うん。子犬が俺だと思って大事にして」


 軽口で流されてしまったけれど、それでも、私は昴夜のことを忘れないつもりだった。
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