リライト・ザ・ブルー


「抱き合ってんのはあれだけど、ラブホはおかしくねと思って……ちょっとこれはマズいんじゃないかなって思って、もし本当だったらヤバイから、英凜に聞いたほうがいいし、なんならあたしから英凜に聞くよって言ったんだけど。胡桃ちゃんから、巻き込みたくないからいいよって言われて……」

「三国に連絡されたら嘘がバレるからだろ。お為ごかししやがって、何言ってんだ」


 侑生の舌打ちが響き渡る。まるで自分がされたかのように、陽菜が震えあがった。


「でもあたしは胡桃ちゃんから直接聞いて……それが最初かな、『これ見た?』って他にもメールきたけど……」

「黙って噂信じてる連中は、誰に何聞いたんだよ」


 苛立った声に、誰もがたじろいだ。自分が噂を広める一因となっていたのだと、侑生にバレませんように――そんな内心が聞こえるようだった。


「……胡桃ちゃんのさ、ブログだよね」


 そんな中で、誰かが小さく呟いた。そうだった、と他の子も頷く。


「ブログ?」


 昴夜が眉を顰めると「あの一部のうるせー連中がおもんねー話を連ねてるヤツか」と侑生が呆れた声で相槌を打った。

 きっといまは(すた)れた文化なのだろうけれど、この頃は、友達が見るのを前提に日常の出来事をブログにしている子達がいた。いまほどSNSが流行っていなかったから、その代わりだろう。

 それを、胡桃は使っていた。


「……そのブログを使って言い触らしたってことか」

「胡桃のブログかあー。アイツ、ああ見えてカースト上位だもんね、みんな見てんのかな」


 昴夜が自分の携帯電話を取りだし、胡桃のブログを開く。白い背景の上下をパステルピンクの斜線が挟み、同じくパステルピンクとパステルブルーのハートが控えめにあしらわれていて、文字は黒に近い茶色……シンプルだけど少女らしいデザインで、今見てみるといかにも胡桃らしく、そして時代を感じさせるページだった。

 胡桃はかなり頻繁にブログを書いていたけれど、直近の日付は<2007/01/30>で終わっていた。


「……最近の日付のはない」

「……ちょっと、借りていい?」


 昴夜から携帯電話を受け取り、適当なブログ記事をクリックして、URLの文字列に規則性があることを発見する。そのURLの一部を手で修正して「ページが存在しません」と表示された後、もう一度URLを修正すると。

<2007/03/13 20:23

 友達が裏掲示板に載ってるっていうから見に行ったらこんなのがあった。完全に彼氏と友達……。こっそり浮気してたみたい。わざわざ当日からズラしてバレンタイン渡してるし、今までもこうやって土日に会ってたんだろうな。彼氏のことも友達のことも信じてた私が馬鹿みたい。。>
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