マシロ

高校生になった陸は、いつの間にか背も伸びて声も低くなって。
すっかり大人っぽくなっていったね。

オシャレにも気を使い始めて、友達ももっとたくさん増えたよね。

陸は部活を始めて、帰ってくる時間が遅くなったけれど、相変わらず毎日欠かさず私と散歩してくれたんだ。

陸よりも早く私の時間は進んでいくから、もう昔みたいに一緒に走り回ったりは出来なくなったけれど、陸と並んで歩くこの時間が私にとって一番幸せな時間になったよ。


陸が高校3年生になると、進路のことでお父さんと喧嘩になったこともあったね。

パン屋を継いで欲しいお父さんと、自分のやりたいことは自分で決めたい陸。

家の中が1ヶ月くらい暗い雰囲気になったこと、私にも分かったよ。

お父さんと言い合いになる度に、陸は心の内を私に吐露してくれたよね。

パン屋が嫌いな訳じゃない
お父さんのことも好きだし尊敬だってしている
けれどこれから先、やりたい事が他にもあるかもしれない
どんな選択肢があるのか
自分で見てから決めたいんだ
色んな世界を見て、経験して、
それでもパン屋になりたいと思った時には
迷わずパン屋を継ぐよ、と。

どこか切なそうな、でもキラキラとした目で語ってくれた陸の想い。

きっとお父さんも分かってくれる。



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