千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
「きゃっ」

 驚いて声を上げると同時に、腰に手を添えられくるりと反転させられる。

「な……っ」

 抗議の声を上げるより早く、彼の手が頬にすっと差し込まれた。

「きみに僕の本気を信じてもらうには、どうしたらいいんだろうね」
「……っ」

 見開いた両目に映る彼に、いつものような笑顔はない。真剣なまなざしを向けられ鼓動が大きく跳ねた。今すぐ逃げ出したいのに体が動かない。

 彼の親指が下唇の際をすーっとなぞった。
 びくっと肩が揺れ、心臓が早鐘を打つ。視界を整った顔がゆっくりと埋めていく。頭が真っ白になり、身じろぎひとつできない。

 ダークブラウンの虹彩に吸い込まれそうになったとき、どこからともなく「ピピピピピッ」と電子音が鳴り響いた。

 はっと我に返り、両手で彼の胸を押し返す。あっさりと離れた隙にきびすを返して階段を途中まで駆け上がったところで、彼が「はい」と電話に出る声が聞こえた。

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