千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
「がまんしなくていい。全部吐き出して。美緒の言葉を……想いを聞かせてほしい」
「……っ」

 耳のそばで聞こえた声にうながされ、震える唇を開く。

「嘘つき……」

 ぽろりとこぼれた言葉に「うん」と返される。瞬間、腹の底から熱いものが喉を焼くようにしてせり上がってきた。

「ずっとそばにいるって言ったのに」

 一度口に出せば、あとは堰を切ったかのように次々と言葉があふれ出してくる。彼は無関係だとわかっているのに止まらない。

「どうして……どうして私を置いていったの⁉ ずっと一緒にだって約束したくせに……嘘つき……嫌いよ、恋なんて嫌いっ、二度と誰もすきにならないわ!」

 しゃべるごとに涙が勢いを増していく。泣きすぎて頭が痛い。ぐったりと全身から力が抜けて、まぶたを下ろしたら意識が見る見る眠りに引きずられた。

「ついて行きたかった……あなたのそばにいたかったの……だからもう……」

 私を置いていかないで――。

 睡魔に抗う力は一ミリも残っておらず、泥に沈むように眠りに落ちていく。遠くから低い声に呼ばれるが、まぶたが持ち上がらない。

「もう二度と放さない」

 そんな言葉が聞こえた気がした。

  
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