千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
いったいなにがどうなったのかと目をしばたたく私のそばで、智景さんがため息をついた。
「相変わらずあの人は、わかりにくさがわかりやすすぎる」
「そうねえ。ああいうの、なんて言ったかしら、ほら……今どきの言葉で……ツンドラじゃなくて、ツン……」
「『ツンデレ』ですか?」
「そうそれよ、ツンデレ! 本人は認めないでしょうけどね」
ふたりが顔を見合わせてあははと笑うのを見て、ためらいながらも「あの」と声をかける。どういうことなのか教えてほしいというと、智景さんはにっこりと微笑んだ。
「結婚の挨拶に来てもいいと言われたということは、美緒のことを認めてくれたということだね」
「そ……そうなのですか?」
にわかには信じがたいけれど、彼の隣で光子先生も微笑みながらうなずいてくれたので、そうなのだろう。よく見ればこのふたり、雰囲気がそっくりだ。
万由美さんは一般家庭から嫁入りをしてずいぶん苦労をしたと光子先生は言う。
もちろん姑である自分が教えられることは全部教え、かばえるものはかばったそうだが、それでも分家などからの風当たりはかなり強かっただろうと先生は言う。気が強く負けず嫌いな彼女は、人知れず努力をし続け、誰にもなにも言わせないほど立派な東雲当主の妻となった。
ただ、自分に後ろ盾がないことを気に病んでいたこともあり、息子の結婚相手に良家の子女を望んだのであろうというのが、光子先生の見立てだった。
話し終えた先生は「私の役目はこれまでです」と言い、普段暮らしているという敷地内の離れに戻っていった。
「相変わらずあの人は、わかりにくさがわかりやすすぎる」
「そうねえ。ああいうの、なんて言ったかしら、ほら……今どきの言葉で……ツンドラじゃなくて、ツン……」
「『ツンデレ』ですか?」
「そうそれよ、ツンデレ! 本人は認めないでしょうけどね」
ふたりが顔を見合わせてあははと笑うのを見て、ためらいながらも「あの」と声をかける。どういうことなのか教えてほしいというと、智景さんはにっこりと微笑んだ。
「結婚の挨拶に来てもいいと言われたということは、美緒のことを認めてくれたということだね」
「そ……そうなのですか?」
にわかには信じがたいけれど、彼の隣で光子先生も微笑みながらうなずいてくれたので、そうなのだろう。よく見ればこのふたり、雰囲気がそっくりだ。
万由美さんは一般家庭から嫁入りをしてずいぶん苦労をしたと光子先生は言う。
もちろん姑である自分が教えられることは全部教え、かばえるものはかばったそうだが、それでも分家などからの風当たりはかなり強かっただろうと先生は言う。気が強く負けず嫌いな彼女は、人知れず努力をし続け、誰にもなにも言わせないほど立派な東雲当主の妻となった。
ただ、自分に後ろ盾がないことを気に病んでいたこともあり、息子の結婚相手に良家の子女を望んだのであろうというのが、光子先生の見立てだった。
話し終えた先生は「私の役目はこれまでです」と言い、普段暮らしているという敷地内の離れに戻っていった。