千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
結
「美緒、いい?」
「はい、お願いします」
「じゃあ行こう」とハンドルを握った智景さんは、滑らかに車を発進させた。
彼と想いが通じ合ったのは、つい二日前のことだ。それなのに、これから婚姻届を出しに行くなんて、今もまだ信じられない。
『一分一秒でも早く籍を入れたい』
想いを交わした直後にそう言った彼は、その翌日――つまり昨日、私を連れて自家用機に乗り込んだ。想像をはるかに超えた移動手段に圧倒されているうちに、気づいたら福岡だった。
彼は私の両親に結婚の承諾と証人欄にサインをもらい、東京に折り返した。東京到着のその足で、今度は東雲商事を訪れた。もちろん社長室まで一直線だ。
彼のお父様からは、まるでなにかの決済書類にサインを貰うかのようにあっさりと証人サインをもらった。
すべての記入が済んだ婚姻届を見ながら、私は腹をくくった。
『東雲智景』の妻になるからには、これくらいで動揺していてはいけないのだ――と。
とはいえ、さすがにすぐにはそうなれそうにない。