千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
 区役所の窓口に婚姻届を提出すると、「お預かりします」と言われただけであっさり受理された。あまりのあっけなさに拍子抜けだ。自動ドアから出たあたりでじわじわと実感が湧いてきた。

「夫婦……になったんですよね、私達」
「ああ、そうだな。夫婦だ」

 こころなしか彼の声にも感慨がにじんでいる。

『今度こそ、なにものにも妨げられることなく夫婦になりたい』

 私達の願いが無事に遂げられたことに、言葉では言い表せない想いが込み上げてくる。

「きちんとした手続きがあるっていいですね」

 こう言ったら重いかもしれないけれど、きちんと法律で公的に守られた関係だということがうれしい。これでもう、私達のことを引き離すことができるとしたら、神様くらいかもしれない。

「そうだな。でも色々とすっ飛ばした自覚はあるから、これからしっかり取り戻せるよう努力するよ」
「私もがんばります」

 最短ルートで入籍だけを済ませたため、これからやることは山積みだ。手始めに、今日はこれから指輪を見に行く。

 だけど本当は順番なんてどうでもよかった。ずっと一緒にいられることが一番大事で、それこそ奇跡のようだ。

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