千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
 こっちは真剣に悩んでいるのに……。

 やっぱりこんな話、しなければよかった。

 恋愛なんてできなくても誰かに迷惑をかけるわけではないし、むしろしない方が心穏やかでいられる。
『いつか自分もだれかと永遠の愛を』――なんて、夢見る年頃はとうに過ぎたのだ。

「じゃあ最後に一か八か、僕に賭けてみないか」

 掛けられた言葉に振り向くと、甘く光る瞳と目が合った。

「どういうことですか」
「僕と恋をしてみないか、と言ったんだ」
「……っ」

 絶句した。
 これだけ『だれのこともすきになれない』と言っているのに、そんなことを言うなんて。

「からかわないでください」

 思いきり彼をじろりと睨んだら、彼は口もとの笑みをふっと消した。

「からかう? まさか。本気だよ。きっと君は僕をすきになる」

 自信満々なセリフに、頭がくらりと揺れた。見た目もステータスも兼ね備えた彼にとって、私のような地味女を落とすなんて、赤子の手をひねるより簡単なことかもしれない。
 どう考えてもからかい半分の言葉を、本気にするわけがない。
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