千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
「私は誰もすきにはなりません」

 きっぱりと断った。――にもかかわらず、彼はふふっと楽しげに笑う。

「つれないね。でもそういうところも嫌いじゃない」
「なっ……」

 なにを言っているのだろう、この人は。

 口をハクハクと空振りさせる私のことを、彼はにこにこしながら見ている。
 やっぱり完全にからかわれているのだ。

 なにを言っても無駄だと思い、着くまで黙っていることにした。

 ほどよい硬さの革張りシートは、まるでソファーのような座り心地で、車内にはほのかに上品な香りも漂っている。さっきまではそんなことを楽しむどころではなかったけれど、なんだかどうでもよくなってきた。
 シートの背もたれにしっかりと寄りかかり、大きく息をつく。寝たふりをすればこれ以上あれこれ言われる必要もないだろう。そう思って、窓の方を向いてまぶたを下ろした。

  
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