千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
 頭が混乱してなにも言えないでいると、長澤さんはふっと鼻で短い息を吐いた。

「『どうして』? そんなのわかりきったことだろう? 男が女を食事に誘うなんて、やりたい以外のなにがあるってんだ」
「な……っ」

 あけすけな言葉に目を見張る。これまでの丁寧な語調と打って変わった乱雑な口ぶりすら気にならないほどの衝撃だ。

「ああ、あんたにはわかんないのか。誰もすきにならない? そう言っておいて、寄ってくる男を食い散らかしてるんだよな」
「違います!」

 思いがけず大きな声が出てしまい、周囲に視線を走らせる。しっとりとしたジャズが流れる店内は、週末の夜ということもあって満席だが、皆自分たちの話に夢中でこちらを気に留める人はいないようだ。
 だからといって、そこかしこに人がいるような場所で話すような内容ではない。

 まさかこんなことを言う人だったなんて……。

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