千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。
 来客用の駐車スペースに車を止めた東雲さんは、私がシートベルトを外すのに手間取っている間に車を降り、助手席側に回ってドアを開けてくれる。

「あ……りがとうございます」

 なんだか気恥ずかしくて、お礼がぎこちなくなってしまった。運転手やドアマンなどの職業の方ならいざ知らず、プライベートで男性から車のドアを開けてもらうなんて初めてなのだ。

 昨日も思ったけれど、どうしたらこうもスマートにレディファーストができるのだろう。まるで根っからそれが染みついている貴族みたいだ。

 東雲さんが車のドアを閉めたのを見計らって口を開いた。

「あの、ネックレスを……」
「そうだったね。約束通りお返ししよう」

 彼はパンツのポケットに手を入れると、ハンカチを取り出す。ゆっくりと開いた中に、私のネックレスが入っていた。

「ありがとうございます」

 両手のひらを上にして差し出すと、彼がそこにネックレスを入れてくれた。落とさないよう軽く手のひらを閉じたとき、上から大きな手に包み込まれた。

「……っ」

 突然のことにビクリと肩が跳ねた。慌てて振り払おうとしたが、逆にきゅっと軽く力を込められる。まるで『逃がさない』と言外に言われた気がした。
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