千年前の恋を忘れずにいたら、高貴な御曹司の最愛になりました。

　イエスともノーとも言えずにいると、彼は私の葛藤を見抜いたのか、思わぬ交換条件を提示してきた。

「もしきみが僕のことを気遣って提案を受け入れかねているのなら、代わりに同居期間中に僕のことを好きになれるかだけでも考えてみてほしい」
「でも――」

　私はだれのこともすきになれない。それがわかっていながら彼の言葉に甘んじるなんて、さすがに厚かましすぎる。やっぱり断った方がいいと頭の中の天秤が傾いたとき、彼は男性らしい眉をふっと下げた。

「僕はこのままきみを置いて帰ったら、間違いなく後悔する。行き場をなくしたきみがこの寒空の下でいったいどうしているだろう、変な男に絡まれてあぶない目に遭っていたら……今考えただけでも心配すぎて夜も眠れない。連絡先を知らないから安否を知るすべもなく、毎日心配すぎて仕事も食事もなにも手につかなくなる」
「そんな……」

　さすがに大げさすぎる。これじゃまるで脅しじゃないか。
　そんなことは知りません！　と、きっぱり突きはなした方がいいかもしれないと思った次の瞬間。

「頼む。僕を助けると思って、うちに来てくれないか？」

　腰を折って頭を下げた彼に目を見開いた。